ファイバーPOG

ペーパーオーナーゲーム(競馬)を開催します。ファイバーPOG開催予定

真田丸38

「昌幸」

ナレ 関ヶ原は徳川の圧勝で終わった。敗軍の将となった昌幸親子は、徳川に付いた信之の助命嘆願の末、紀州九度山に幽閉されることとなった




ナレ 紀州紀の川の奥、高野山の山裾に、その小さな村はあった

竹本 御屋敷の隣に小さな番所を設けた。お手前方が村から一歩でも出れば、こちらに知らせが来ることになっておる。抜け出すことなど考えずに、ごゆるりと余生を送られよ

昌幸 承知、致した

竹本 九度山村の長は、チョウベエという男。挨拶に来るよう申し付けておるが、いっそこちらから出向かれてはいかがかな?




昌幸 お前行ってこい

源次郎 父上がまいられたほうがよろしいのでは

昌幸 …任せる




源次郎 行ってまいる

春 お気をつけて




源次郎 何だ!?その姿は

内記 ぐるりと辺りを見てまいりました。山菜が、こんなに

源次郎 いずれ、ゆっくりと周囲を歩いてみよう

内記 ええ




きり あ。はい。村長に会いに行くんでしょ。手ぶらはまずいと思うの。大阪から持ってきたの、何かの役にたつかなって




源次郎 ボウルと申す、南蛮菓子でござる。これから世話になる。よしなに頼みます

チョウベエ 何でここに来なすった。何でこの村に

きり こっちだって好き好んで…

源次郎 迷惑をかけてすまぬ

チョウベエ 1日もはよう御赦免となって、ここを去っていただきたいと。みな、祈っております

民 そうだ!

源次郎 われらもそれを望むところ

チョウベエ でなければ1日もはよう…あの世へ行ってくだされ




きり どのくらいここにいるんでしょうね

源次郎 それは兄上次第

きり 1年くらい?

源次郎 私はもっと長くなるとふんでいる

きり 蟄居って、縛られたり牢屋に入れられたりするのかと思ってた

源次郎 村からは出られないが。それでも山歩きは出来る。1日何もせずに、ボッーと過ごせると思うと、むしろ楽しみだ

きり そこまではないかなあ

源次郎 真田の里で駆け回っていた頃を思い出した

きり 楽しかったねえ。お梅ちゃんもいたしね

源次郎 …お前は、いっつもいるな

背後にいる春に気づく二人

きり 歩いてこよー

源次郎 真田の里の話をしていた

春 一度行ってみたいものです

源次郎 私が生まれ育った土地を、お前にも見せてやりたい

春 すえちゃんにも会いたいです

源次郎 いずれ

春 父上様が御呼びですよ

源次郎 ああ




佐助 きり様

きり 落ち着きましたか?

佐助 何とか、住めるようにはなりました

きり これ1日で作ってしまうんだから、びっくり。何でも出来るんですね

佐助 スッパですから

きり 佐助さんて頼りになるわよねえ

佐助 あのう、これ

似顔絵

きり 私?

うなずく

きり 絵も上手

佐助 スッパですから




昌幸 先程、浅野の番人が届けていった

源次郎 兄上から!?兄上、名前を変えられたのですね

昌幸 わしが与えた、幸の字を捨ておった

源次郎 徳川に対する忠義を示したのでしょう

昌幸 源次郎

源次郎 はい

昌幸 源三郎が捨てた幸の字、もろうてくれんか

源次郎 私がですか

昌幸 ぉう。真田…幸…信繁?

源次郎 考えておきます




サンジュウロウ 九度山という所は寒いのでしょうか

源三郎 紀伊の国だからな。むしろここよりは暖かいのではないか

サンジュウロウ 大殿や源次郎様はそこで何をしておられるのですか

源三郎 何もせず、ゆっくりしておられるようだ

シゲマサ 良いことづくめではないですか

源三郎 丸1日、誰かに見張られておるのだぞ?とにかく今は、大譜様に、御赦免を願い続けるより他に道はない

サンジュウロウ すぐに伏見へ届けまする

源三郎 母上の御様子は

シゲマサ 相変わらず、ふせっておられます




源三郎 母上、召し上がらねば御元気になりませんよ?

薫 何も食べたいとは思わないのです

源三郎 はよう御元気になってくだされ。母上には、父上たちが戻ってこられたときに、元気なお姿で御迎えする役目がございますゆえ。新しい粥を持ってきてやれ

こう かしこまりました

松 行かれましたよ

薫 何かお腹にいれておかないと死んでしまうから

松 甘いものばかり召し上がってるからお食事がとれないのでは?




薪を割れず苦戦する春

きり 源次郎様にやっていただいたら?

春 これはわたくしの仕事です

きり ああ…ちょちょちょちょちょっ。私もね。そんなに知らないんだけど。腰がね。こう腰が大事。ふっ!

割る

きり 頑張って

春 きりさん

きり ん?

春 これからも源次郎様のこと、よろしくお願いしますね

きり それはあなたの役目でしょう?

春 不安なんです。一緒にいられて嬉しいけど、いつか、嫌われてしまうんじゃないかって

きり 大丈夫。あの人は、あなたのこと。大好きだから

春 お梅さんに似ているからですか?

きり 似てるっていうか、お梅ちゃんもあなたも、私みたいに垢抜けていないでしょう?源次郎様そういう人が好みなの。自信持ちなさい

きり、去る

春、イラつく




春 悔しいんです

源次郎 悔しい?

春 源次郎様は、わたくしの夫です。わたくしは、源次郎様の妻です

源次郎 きりに何か言われたのか、気にすることは全くないから

春 …

源次郎 きりには上田に帰ってもらおう。内記の世話のために居てもらおうと思ったが、お前の気持ちのほうが大事だ

春 あの人はどうでもいいんです、私。負ける気がしないから

源次郎 …では

春 …お梅さんです

源次郎 お梅?

春 源次郎様の心の中で、今でもお梅さんは生きている。勝てるわけがありませぬ

ぶすっ!ぶすっ!ぶすっ!
(障子に穴を開ける。約10個)

源次郎 や、やめなさい。すきま風が




ナレ 一方、上杉景勝徳川家康に謝罪し、会津120万石から米沢30万石に、減封されることとなった。いずれは上杉を頼るつもりだった昌幸の思いは、ついえた

墨をする昌幸




ナレ この年、春は信繁との最初の子を身籠っている

春 源次郎様

源次郎 ん

春 もし、この子が女の子なら、名はわたくしがつけてもようございますか?

源次郎 もう決めてあるのか?

春 お梅!

源次郎 …

春 そうすれば、この先源次郎様がお梅の名を口にするとき、それはこの子のことになるから




ナレ 慶長8年、家康は征夷大将軍に任ぜられた。同じ年。孫娘千姫豊臣秀頼に輿入れさせ、その権勢は絶頂を迎えようとしている

源次郎 征夷大将軍になったということは、全ての武士の頭領として名乗りを上げたということ

内記 いよいよ、徳川の世になるのですか

源次郎 これで、秀頼様のお立場はさらに弱くなりました

昌幸 運が向いてきたぞ?家康は今浮かれておる。われらの赦免もそう遠くないとみた。上田へ帰れるかもしれんぞ。ここでダメならばあとはない。源三郎に、一踏ん張りしてもらわんとな。ん?




源三郎 これを、本多佐渡守殿に届けるのだ



シゲマサ 本多様に?

源三郎 源次郎から文が届いた。本多殿は、ああ見えて心優しき御方。きっと力になってくれるはずだと

サンジュウロウ いよいよ御赦免となりましょうか

源三郎 祈るしかない




本多 真田伊豆守より、書状が届きました

家康 中身は、わかっておる

本多 九度山に追いやってから、はや2年。赦免を考えてやるには、良い機会…

家康 ならぬ!安房守は、死ぬまであそこにおるのだ




ナレ さらに2年後、家康は征夷大将軍を、秀忠に譲った




源次郎 将軍の位を息子に譲ったということは、今後は徳川が政を行うと世に知らしめたということ

内記 ということは

源次郎 秀頼公が天下人となる目は…失われました

昌幸 今家康は浮かれておる。最後の機会じゃ。ここで、赦免がならねば、あとはもうないぞ




家康 くどい!

本多 真田安房守、流罪となってはや4年。もはや、牙を抜かれた狼。野に…

家康 あれが九度山を離れるのは、骨になったときじゃ

本多 …

秀忠 佐渡守。もう安房守のことは一切、われらの耳に入れるな。あの男はもう死んだのだ

本多 かしこまりました




薫 いつになったら殿は御赦免されるのですか

源三郎 色々手は尽くしておりまする

松 源次郎なんて向こうで2人も子どもをもうけてるんですよ?みなで一緒に暮らすわけにはいかないのですか?

シゲマサ それだけ、大御所様のお怒りは大きかったということだ

松 誰よ。大御所様って

シゲマサ 今は、家康公はそう呼ばれてるんだ

松 わたしたち皆で大御所様に直訴してみてはどう?

源三郎 バカを言わんでください

松 皆で頼めば、何とかしてくださるかも

薫 はっ…それしかありませんね。さ、まいりましょ

稲 母上様!いい加減になさいませ。父上様の御赦免はもうお諦めください

薫 そういう訳にはいきません!

稲 夫は、父上様とは縁を断ったのです。もう二度と、この城の中で、真田安房守様の御話をすることはなりません。わたくしが、許しませぬ

薫 ええ…

稲 殿も殿でございます、何のために御名まで変えたのですか。我が家までおとりつぶしになってもよろしいのですか?全ては、真田のためでございますっ

こう これ以上大御所様が御機嫌を損ねれば、大殿様も源次郎様も、御命があぶのうございます。奥方様は、それを心配しておられるのです

薫 だったらそう言えばよいではないですか

松 ねえ




昌幸 源次郎…こりゃあひょっとすると、わしはもうここから出られぬのかもしれんなあ




ナレ 慶長11年。豊臣秀頼主宰による、大がかりな鷹狩りが催された

片桐 右大臣、豊臣秀頼公の、御成りである!

秀頼 みな、仕度はととのっておるか

片桐 いつでも出立できまする

秀頼 では参るぞ

清正 御出立じゃ

は!




源次郎 …。コウセツサイ殿!

コウセツサイ 北条氏直様の御霊が、高野山で眠っておられるので、弔いに参った

源次郎 左様でしたか

コウセツサイ これで、気兼ねなく、身を引くことができる

源次郎 御隠遁なされるのですか

コウセツサイ 最後は、出家らしゅう終わりたい

源次郎 私も、蟄居暮らしにすっかり慣れました

首をふるコウセツサイ

コウセツサイ お主はいかん

源次郎 他にやりたいこともありませんし

コウセツサイ 板部岡江雪斎を侮るな。お主の眼差しの奥の、燻っている熾火が見える

源次郎 今さら左様なものは

コウセツサイ いずれ誰かが。その火を求めに来よう。楽しみにしておるぞ。真田、サエモンノスケ




源次郎 父上

昌幸 入れ

入る

昌幸 何の騒ぎだ

内記 村人たちが表に集まっております。どうやら隣村と揉めており、これから、喧嘩をしかけにまいるようです

昌幸 村長が、父上と話したがっております




チョウベエ カムロ村の長は奴ら、わしらの山の薪を勝手にとっていきよるんじゃあ。何度追い払ってもやってくる。もう我慢できねえと皆怒ってる!

昌幸 わしに、何を望む

チョウベエ 徳川様相手に、2度も勝ったスゴい御侍さんと聞いた。わしらに、戦の仕方を教えていただきたい

内記 いかがなさいます

昌幸 …手勢は

チョウベエ 20人

昌幸 敵は

チョウベエ 50!

昌幸 倍以上の敵と戦うときは、真っ正面から攻めても勝ち目はない。そのときは、20の兵を、二手に分け…

内記 いかがなされました

チラ

源次郎 村長殿。村通しの勝手な喧嘩は、太閤殿下が禁じられた。聞いたことがあろう

チョウベエ まあ

源次郎 村と村の喧嘩で死人を出せば。どちらの村長も磔にされる

チョウベエ 磔?

源次郎 ここはまず、浅野のお殿様に話を持って行きなさい。九度山村は、われらの見張り役をしかと勤めておられる。きっと親身になってくださるはず

内記 とゆうわけだ。帰るがよい




平八郎 ほれ、できたぞ(竹とんぼ)ヒャクスケ。さあ飛ばしてみろ

はい

飛ばす

センチヨ …

平八郎 ああ、わかっておる。わかっておる。これは、センチヨの分じゃ。待っておれ、のう?

センチヨ はい

平八郎 よしよし。例え稲の子でなくとも、わしの孫には替わりはない

指を切る




家康 隠居?どうゆうことじゃ

平八郎 それがし、一度たりとも、手傷をおうたことがないのが自慢でございました。本多平八郎、一生の不覚

家康 かすり傷ではないか

平八郎 すでに世は泰平。平八郎出番はございませぬ

家康 わからんぞ?まだまだ、西の方角で一波乱、あるやもしれん

平八郎 その時には、わが槍。トンボキリを片手に真っ先に駆け付けまする。この老いぼれ、例え手柄はたてられずとも、命尽き果てるまで、殿に尽くす所存。それこそが、モノノフの努めでござる

家康 ようわかった。ではそれまで、クワナで、ゆっくり養生せい

平八郎 はは

ナレ その一生を、家康のために尽くした本多忠勝は、大阪の陣を待たず、慶長15年この世を去る




サンジュウロウ 北政所様は髪をおろされて、今は京にお住まいとのこと

源三郎 何とか御会いすることはできんのか。あの御方なら大御所様を説得できる

サンジュウロウ 難しいやもしれませぬ。帝や徳川様の御使者とは御会いになるそうですが。実は、北政所様の元でかつて、侍女たちの指南役をやっていたものが一人、京の町におると耳にしました。叶わぬまでも、あたってみますか

源三郎 頼む




失礼致します

つう つうと申します

ナレ 書をたしなみ、和歌にも通じ、当時一流の文化人として知られたこの女性は、名を、小野お通という




清正 家康殿に会ってきてくれ

片桐 大御所様に?

清正 秀頼公は、立派な若者に御成長なされた。あのお姿を一度、家康殿に御覧いただく。さすれば、家康殿は秀頼公に一目置くはず。豊臣家の扱いも変わってくると思うのだ

片桐 良い考えだ。すぐに参ろう




家康 片桐の狙いは何だ

正純 しかとはわかりませぬが、わざわざ大御所様が御上洛なされてまで、秀頼に会うこともありますまい。追い返しましょう

家康 いや待て。上洛はする

正純 大御所様

家康 上洛はするがその代わり、対面の場は、二条城

正純 二条城

家康 わしが建て直したわしの城に秀頼をよぶのだ。世間は豊臣が、徳川の臣下となったと思うであろう。これでどうじゃ




清正 そもそも徳川は豊臣の家臣ではないか。向こうから来るのが道理

片桐 しかしそれがむこうの言い分なのだ

秀頼 私はかまわぬぞ

清正 若君

秀頼 むこうはわざわざ駿府から参るのだ。出向いてやろうではないか

清正 しかし

秀頼 どんな形であれ、大事なのは私と家康が会うこと。そうではないのか

片桐 もう1つ、対面は2人きりでとのこと

清正 いかん、危なすぎる

秀頼 肥後守

清正 罠かもしれませぬ

秀頼 差し向かいで話したいならそうすればよい。それを恐がる…私ではないぞ




ナレ 慶長16年4月8日。家康は秀頼と二条城で会見した

回想
三成 もし私が、志半で倒れたら、豊臣家のこと。お主に託す

清正 何?

三成 命にかえて、秀頼様を御守りしろ




本多 肥後守様。ここから先は、御遠慮いただきたく存じまする

清正 そうはいかぬ

本多 取り決めでございます

清正 それがしは大御所様の警護のために参るのだ

本多 そうは見えませんが

前に立ちはだかる

清正 案ずるな、どけ

押しのける




家康が座っている。秀頼と清正が家康のほうを向いて対面に座る

家康 下がれ…肥後守

清正 …

家康 …

秀頼に促され清正は下がる。が、立ち止まり、戻ってくる。今度は秀頼のほうを向いて座る

家康 ふっ

秀頼 豊臣秀頼である。ドン!

家康 ご無沙汰致しておりまする(狼狽える)




家康 ありゃあ本当に太閤の子か?

本多 なかなかの若武者ぶりでございましたなあ

家康 いかんのう

本多 いけませんな

家康 仕方あるまい

本多 豊臣家もつくづく運がない。秀頼公が凡庸な二代目であれば、しぶとく生き延びられたものを

家康 その前に、あの髭面じゃ

本多 服部半蔵の出番でございますなあ

家康 あれは死んだのでは

本多 ようできた二代目がおります




清正とすれ違い様に傷を追わせる半蔵。清正は痒いとしか思わない

ナレ 加藤清正はこの会見後、肥後へ戻る船の中で発病し、2ヶ月後に死んだ




源次郎 大助

大助 父上

源次郎 村の子どもに何と言われたのだ

大助 …

源次郎 良いから、申してみなさい

春 大助

大助 罪人の息子

源次郎 いいか大助。父も爺様も、決して罪人ではない。流れでこうなっただけのこと。…いいか、この世の中で徳川の軍勢を相手に2度も勝ったのは、爺様だけだ。お前にはその爺様の血が流れている。誇りを持て

昌幸 大助、今度何か言われたら、こうするんじゃ。まず、相手の前で膝をつき、頭を下げる。そして、謝るふりをして噛みつく。喧嘩に卑怯も何もあるか。勝ったもん勝ちよ。そして手には常に小枝を隠し持って置く。手で握りしめたとき、この先っぽの固いところをちょっとだけ出しておく。これで突くんじゃ。拳固指、よーく役に立つ。やってみろ。突くのじゃ、シュッと

春 大助、良いことを教えていただきましたね

昌幸 これは効くぞ

源次郎 私も昔教えてもらった

春 役に立ちましたか?

源次郎 兄上に止められた、あのやり方は卑怯だと。兄上が父上の教えを嫌がってましたね。常に正々堂々とあるべきだ。!。父上!

春 父上様!




昌幸 そこ…

源次郎 はい?

昌幸 そこ、開けてみよ。孫子にならって、わしも書いてみた。戦場で、わしが学んだことの全てがそこにある。お前にやる

源次郎 父上

昌幸 願わくば、もう一度戦に出たかった

源次郎 そのような弱気なことを

昌幸 源次郎…遺言じゃ、しかと聞け。いずれ必ず、豊臣と徳川はぶつかる。その時はここを抜け出し、お前は、豊臣につけ

源次郎 はい

昌幸 これより話すは、徳川に勝てるただ1つの道。10年かけてわしが考えた策じゃ

源次郎 お願いします

昌幸 まず、手持ちの軍勢を持って、真っ先に、尾張を制する

源次郎 尾張

昌幸 徳川が攻めてきたら、頃合いをみて、尾張を捨てる

源次郎 捨てる?

昌幸 一旦、近江まで退く。一時でも、尾張を抑えたということが大事よ。これで、日の本中の徳川に不満を持つ大名の心を掴む

源次郎 なるほど

昌幸 さらに、セタと宇治の橋を落とし、敵の追撃を阻む。その間に、二条城を焼き払う。そうなれば、徳川勢は大阪に攻めかかるしかない。それを、大阪城で迎え撃つのじゃ。戦は長引かせるだけ長引かせよ。その間に、各地で徳川に対して反旗が上がる。反旗が上がれば、敵は大阪攻めだけに関わってはおられん。やがては、引くしかなくなる。負ける気がせん

源次郎 しかし、父上ならきっと上手く運ぶでしょうが、私では難しいのでは

昌幸 何で

源次郎 私には場数が足りません

昌幸 わしの立てる策に場数などいらん。心得は1つ

源次郎 お教えください

昌幸 軍勢を1つの塊と思うな。ひとりひとりが生きておる。ひとりひとりが想いを持っておる。それを…ゆめゆめ忘れるな

源次郎 かしこまりました

昌幸 疲れた




昌幸 信濃に…帰りたかった。上田の城へ

昌幸の手を握る源次郎

馬の鳴く声と駆ける音が聞こえる

昌幸 おやかたさま。おやかたさま!…

ナレ 紀州紀ノ川の、高野山の山裾にその小さな村はあった。その外れで、一人の戦国武将が…死んだ